2015-11-07 ラブライブ!サンシャイン!! Aqours始動―μ'sが渡したバトン ラブライブ!サンシャイン!!より、1stシングル「君のこころは輝いてるかい?」でデビューした新鋭・Aqours(あくあ)。PVの内容をベースにして、彼女達のすがたに迫ります。 これからはじまる青春 下はラブライブ!シリーズにおいて、作詞を一任されている畑亜貴さんのツイート。 μ’sは永遠に輝き続ける青春、Aqoursはこれから始まる青春。どちらもまぶしくて、ある一瞬で涙が出そうになる。— 畑亜貴という概念 (@hataratti) 2015, 9月 9 現段階のAqoursは、「新規性」を売りにしています。 新規アイドルの問題点とその解決策 アイドルは物語です。 単にトーク・歌唱・ダンス等のパフォーマンス、あるいはビジュアルが秀でていても、そこにアイドルとしての魅力はありません。 それらの要素は築き上げてきた人格・背景と相まってこそ真価を発揮するものです。 要するに、新規アイドルの問題点は「背景のなさ」にあります。自己の歴史を持たないアイドルは、何をしても面白味に欠けてしまうのです。 劇場版ラブライブ!The School Idol Movieは、μ'sのさいごを描くと同時に、この問題を解決する一手を打ったと言えます。 それは、今後現れるすべてのスクールアイドルの背景に、μ'sの5年間の歩みを反映させるというものでした。 また、バトンを受けたAqoursからは、積極的にμ'sの文脈を汲む意向が見えてきます。 受け継がれるラブライブ!の遺伝子 白い羽 アニメシリーズで演出上のキーアイテムとなっている白い羽。 μ'sからのバトンを引き継いで、坂を駆け上りはじめます。 黄色い円 アニメ1期13話、Happy maker!の再来です。 円やロールダンス、アルパカの妊娠発覚などによって終わりと始まりの円環、新たな誕生を表現したHappy maker!から、太陽をモチーフとして黄色い円を引用しています。 また、劇場版で描かれたμ'sラストライブ「僕たちはひとつの光」も、円形のフォーメーションであったことは記憶に新しいです。 まさにここが、新たなはじまりというわけです。 見覚えのあるカメラワーク・振り付け 制作陣が同じだからということもありますが、意識してやっていることでしょう。 探せばいくらでも出てきそうです。 シナリオ上Aqoursの発起はμ'sの影響とされているため、これらのオマージュは妥当であるとすら言えます。 ストーリー仕立ての映像 μ'sの1stシングルと同じく、ユニット結成エピソードを思わせる映像が展開されます。 金髪に手を差し伸べる展開は必須のようです。 L字サイン LoveLiveのイニシャルでありシンボルとなるL字サインは、かつてから様々なシーンで登場しています。 上方を指差すように作るため、PV内における上昇の振り付けとの親和性が高いです。 μ'sとの差別化・洗練 ここまでは二作品間のつながりを挙げてきましたが、Aqoursはひとえにμ'sと同じことをしているわけではありません。 色相環と画面映え 色相環とは、色相を波長の順で環状に配置したものです。 色相差が最も大きい(色相環において反対に位置する)二色を補色と言います。お互いを最も目立たせる色の関係であり、それらを用いて画面を彩ることにより、明度や彩度、あるいは面積などの組み合わせによって様々な効果が得られます。 数多の絵画にも、見る人にもたらす印象を操作する配色がなされています。 配色にみるキャラクターデザインの変遷 ― 髪と瞳の配色 顔まわりの配色は作品づくりに多大な影響をもたらしています。大きな面積を占める髪の色から受ける印象が、性格設定に直結しているパターンは非常に多く見られます。 また、特に美少女キャラクターはバストショット~アップショットの機会が多いですから、髪や瞳の色は画面を構成する上で重要な要素となります。 2010年8月25日発売のラブライブ!1stシングル。 9人がほぼ統一された衣装を着るという前提のうえ、アップショットに耐えうる画面映えを得るために顔まわりでかなり露骨な配色をしています。 瞳が強調され、髪色による印象を受けにくいためキャラクター一人ひとりの性格のブレ幅を大きくとることができると言えます。 時は流れて2014年1月29日発売の「タカラモノズ/Paradise Live」 企画当初は色・デザインを統一した衣装が多めでしたが、各々への補色の持たせ方として、カラーバリエーションのある衣装や装飾品などを用いる傾向が強くなってきました。 そして2015年10月7日発売、Aqoursの1stシングル「君のこころは輝いてるかい?」 キャラクターデザインの方向性が、より先の展開を据えたものに変更されたように思えます。 髪と瞳に同系の色を用いることでキャラクターから得られる印象を整え、キャラクターの方向性を明確にしています。 衣装とヘアゴムで補色を足しているパターン。 本作はラブライブ!シリーズを通して初のダブルセンターでの落ちサビ・大サビ構成となっています。 赤色・暖色系の二人と、衣装・背景大道具の補色関係によって華やかな画面を作り出しています。 Aqoursには「先の展開に合わせたキャラクターデザイン」という、μ'sの経験から培われたノウハウが詰められているように思えます。 今後の展開予想 今後Aqoursの活動はラジオ・ゲームアプリ・書籍・ライブ、そしてアニメと多岐にわたりメディア間を跨いで活発化していくことが容易に想定できます。 現在ラブライブ!サンシャイン!!は、「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours課外活動 はじめましての旅~DOKI-DOKI SUNSHINE!!~」と称した全国のショップでのお渡し会を展開しています。 このイベントは各会場学年ごとの3人組で出張していますが、今後はこのようなツーマンセルないしスリーマンセルでの活動を主流にやっていくのではないかと予想しています。 μ'sの弱点は、センセーショナルかつ収入的にも美味しいライブを長期スパンでしか行えないことにあります。長時間に及ぶダンスパフォーマンス、長期間を要するダンスリハーサルは演者に負担がかかりすぎました。 これらを克服すべくキャストを若いダンス経験者で固めたAqoursは、更に短期スパンでライブを行うべく少人数ユニット活動を盛り上げていくと思われます。 単色構成のメンバーが主流のAqoursからどんな補色ユニットが生まれるのか、とても楽しみです。